<< main >>
孤独の中で生ける主に出会った! 〜ロビンソン・クルーソー(2)〜
 小学生用のロビンソン漂流記

 ロビンソン・クルーソーは日本では大人はあまり読まず、子どもの読み物のようである。それで小学生がどのような漂流記を読んでいるのか知ろうとして、1994 年発行の古書を手に入れた。私の予想に反して、クルーソーの信仰の成長の足跡は、子どもの本でも省略されてはいないことを発見した。

robinson_crusoe_2_1.jpg この本の末尾に、読後感想文が掲載されていた。「クルーソーは優秀で、心の強い、勇敢な人、人食い人種に捕らえられた人を助けだし、仲間や自然を大切にする心優しい人である」と書いている。小学4 年生としては優れた模範的な感想文であるが、クルーソーの信仰のことには気が付かなかったようである。私も同じ4 年生のときに読んだが、クルーソーの人種差別意識に反発を感じたことを明確に覚えている。クルーソーはフライデーの命を救ったが、一方、孤独から救われたのである。二人は五分五分であるのに、何故友人にならないで初めから主人と従者なのかと疑問を持ったのである。

 その印象が強かったので、クルーソーの漂着後、割にすぐにフライデーがやってきたと錯覚した遠因になっていた。事実は、クルーソーは25 年以上この島で一人きりで生き延びる苦闘を繰り広げ、孤独と闘い、苦しみ、楽しみ、そして創造主である神としっかり向き合う恵みを受けたのであった。

robinson_crusoe_2_2.jpg


無人島からの脱出

 「フライデーとの出会い後、一艘の船がこの無人島にやってきた。謀反人が船を乗っ取って、船長以下数名を島に置き去りにするためであった。こうして船長たちとクルーソーの出会いが実現し、二人は偉大な創造主の摂理を見て、互いに神に感謝した。

 クルーソーは無人島での霊的・精神的孤独との壮絶な闘いの中で、聖書を読み、祈り、そして主と直接語り合う親しい関係に導かれていたのである。また、フライデーもクルーソーに教えられて、真の神を信じる者となっていた。
クルーソーは船長たち数名と協力し、見事な戦術を展開して謀反人を破り、首謀者を殺して船のマストに吊り下げて見せしめにした。こうして、船を奪い返し、無事に故国に帰り着くことになった。

robinson_crusoe_2_3.jpg   robinson_crusoe_2_4.jpg


ロビンソン・クルーソー漂流記の主題

 ジャン・ジャック・ルソーは教育論『エミール』の中で、子どもの教育のために最も重要な一冊としてこの本を上げており、また、出版された当時、最も厳しい評論家でさえ、「ジョン・バニヤンの『天路歴程』に加えて子どもに与えたい本」と認めた。
キリスト信仰を持たず、聖書を知らない日本人には、聖書の引用箇所の意味や必要性など理解しにくいのか、ただの冒険小説としかみなされていないようである。

 第一作・第二作に一貫している主題があり、第三作「反省録」では信仰・倫理・社会に関するデフォーの思索をまとめている。「クルーソーの心の変遷」「信仰の成長」「主との対話」等、デフォーを映し出した形で人間像、人生における重要事項を巧みに描写している。

 無人島に置き去りにされて4 年余を過ごした一人の水夫の体験談をデフォーはヒントにしたかも知れない。しかし、実はそれ以前に、荒浪に翻弄された自分自身の人生の苦闘や孤独を、小説という形で発表することを考えていた証拠が挙がっている。この三部作は、想像を絶する人生の荒浪に揉まれたデフォー自身の自叙伝であり、人間学、社会学、キリスト信仰などの視点から非常に味わい深い大人の小説である。壮絶な人生の本質を煮詰め、昇華させて、含蓄のある作品に仕上げた力量に痛く感銘を覚える。子ども時代に読んでおられても、クリスチャンは特に信仰に軸足を置いて、改めて読み直されることをお薦めする。

ダニエル・デフォーの生い立ち

 デフォーは1660 年頃に非国教会派に属する中産階級の子としてロンドンに生まれた。1660 年代は、階級抗争があり、ピューリタン革命が挫折し、王政が回復した。また、英国国教会派と非国教会派の抗争があり、歴史上重要な年代である。

robinson_crusoe_2_5.jpg

 家族の意向により、デフォーは聖職者になるために、特別に優れた教育を受けた。しかし、彼は事業家になる志を持ち、すぐに成功を収めた。富や名声を得て、事業と政治の世界に突入し、全力投球をしてのめり込んだ。ロビンソン・クルーソーの中で告白しているように、彼は神に背を向けて大嵐の吹きすさぶ人生の荒浪に身を ( ) して、霊的な荒野の中を、 彷徨い始めた。

robinson_crusoe_2_6.jpg

 デフォーの文学的・非文学的活動は、この時代の精神風土から自然に形成されていったのだろう。1665 年にはロンドンはイギリス史上空前絶後のペストの流行に襲われ、人口46 万人中7 万人もの死者が出るという惨状であった。そして、その翌年にはロンドン市の大半を焼き尽くす大火が起こっている。少年デフォーがこれらを体験したことは、後の「ペスト年代記」に書かれている。

浮き沈みの激しい 波瀾 ( ) の人生

 デフォーは投機的な側面まで含めた各種の経済活動、政治活動、ジャーナリスト、そして小説家と 多岐 ( ) ( ) って精力的に活躍し、落ち着いていた時期は短く、最後まで荒浪にれ続けた。その人生の起伏の激しさは、尋常ではない。大きな成功をおさめて頂点に立ったかと思うと、いきなり荒れ狂う大海原に叩き込まれ、命からがら陸地に辿り着くと、そこには仲間のいない寒々とした孤独が覆い被さり、遠くを見やると荒浪の立ち騒ぐ、荒涼たる人の世のむなしさが広がっていた。

robinson_crusoe_2_7.jpg ある時は専制君主ジェームス二世打倒運動に加わり、()めな敗北を喫した。何百人もの軍人が処刑され、死体は公衆の面前に曝された。デフォーは何とかこの処刑を免れたが、何年も社交界から遠ざけられた。

 ある時は首相の協力者になってトップレベルの政府関係者になり、時事問題に精通し、自分一人で刊行する週刊誌(後には週3 回)を9 年間、発行し続けるという快挙を成し遂げた。

robinson_crusoe_2_8.jpg ウィリアム王と友情をはぐくみ、王立の法廷においてアドバイザーになり、社会的地位を高めた。ウィリアム王の亡き後、耐え難いほどの窮地に立たされたが、アン女王に救い出された。事業も、大成功して頂点に達したかと思うと、大失敗をして生涯返却しきれない負債を背負って、何度も投獄される ( ) き目に ( ) ったりした。自業自得ではあっても、このように絶頂と絶望の繰り返される過酷な状況に振り回されて、デフォーは孤独で   んだ人間となっていった。

 イギリスの議会で勢力を持っていたグループは、国民が国教会にだけ 帰依 することを要求し、それに協調しない牧師たちは教会を追われ、財産を没収され、投獄されるという激しい迫害を受けた。これを 糾弾 するためにデフォーは「非国教徒撲滅策」という痛烈な風刺を込めた小冊子を出してロンドン中の話題になった。

 当然、時の指導者たちは烈火の如くに怒り、デフォーを3 回も「さらし台」に立たせた後、悪名高い汚水だめニューゲート刑務所に投獄したのである。デフォーは5ヶ月間、孤独と死しか見えない苦しみをめることになった。好調だった事業は破綻し、家族は飢え、ボロボロになった。まさしく、究極の「難破」だった。
獄中で泥棒や殺人者から、ロンドンの荒廃した生活の冷酷さを聞き、腐敗、不正、イギリス人の上品なうわべの下に潜む不道徳を知ることになった。
この12 年後、船の壊滅的な難破、無人島の厳しさを耐え抜くロビンソン・クルーソーの中に、自身の体験や、自分の姿を映し出して発表したのである。

robinson_crusoe_2_15.jpgrobinson_crusoe_2_11.jpg

クルーソーの信仰の成長過程

 クルーソーは両親に背いて家出をし、船に乗り、嵐に逢う。「もし神のおぼしめしで命拾いしたら、父の元へ帰り、二度と船には乗らない」と決心した。ところが嵐が過ぎ去ると、また航海に出かける。冷静な判断が出来ず、押しまくる力の前に無力な自分を発見している。苦難に襲われる度に、神様の罰だと思ったり、助けて下さいと中途半端な祈りをしたりするが、嵐が去ると忘れてしまうという得手勝手な信仰である。

robinson_crusoe_2_9.jpg 遂に、無人島で暮らすという結果をもたらした呪いの船出をし、難破し、仲間と共にボートで脱出し、たった一人だけ助かって無人島に漂着した。自分の身に降りかかった不幸を呪って「絶望の島」と言ったが、その後、自分一人だけ助かったことに気が付き、天を仰いで、形式的に神に感謝をした。(※日本語で神と翻訳されている言葉は、原語(英語)では、クルーソーの神は、初めから大文字の「God」、つまり唯一神である聖書の創造主である。そして、フライデーたち、「蛮人」の神は小文字で複数形「gods」であり、「諸々の神々」と日本語に翻訳されるべき言葉である。すなわち蛇や狐など動物、あるいは石や木から人間が作ったものなど「何でもあり」である。)

 生き延びる苦労をしている時に、大麦の芽が出ているのを発見し、神の恵みに感謝し涙を流す。だが、それが難破船から持ち出した鶏の餌袋からこぼれたものに過ぎないことに気が付き、「ただrobinson_crusoe_2_12.jpgの偶然」と、一瞬にして感謝の念を失う。そして、1ヶ月少し経った頃には、安息日を守らなくなった、つまり礼拝しなくなった。

 半年経った頃、大地震に見舞われ恐怖に駆られ、「神よ、憐れんでください!」と唱えたが、地震が終わると忘れ果ててしまった。

 島での生活、8 ヶ月半目、ひどい病気になり、このまま死ぬのかもという恐れに捕らわれた。命からがら漂着し、地震や暴風雨に見舞われても、本気で主にすがる心を持たなかったクルーソーであるが、病気という死の恐怖に襲われ、初めて正気に返って主を思い出した。何とかなっている時には、創造して下さった方のことは忘れ果てるものなのだろう。祈ろうとしたが、祈り方を知らなかったと告白している。今まで開いてみようともしなかった聖書を読み、詩篇 50 篇15 節に捉えられた。

 苦難の日にはわたしを呼び求めよ。わたしはあなたを助け出そう。あなたはわたしをあがめよう。

 こうして日課として聖書を読み、祈ることを身につける恵みを得たのである。漂着1 年の記念日を厳粛なものと定めて断食し、地面にひれ伏し罪を告白し、神の公正な裁きを認め、そしてイエス・キリストを通して慈悲を下さいと祈ったのである。クルーソーがこのように生まれ変わった如くに、デフォーは、さらし台後、刑務所に投げ込まれ、四面楚歌の中でこの恵みに預かったのだろう。

robinson_crusoe_2_13.jpg

 4 年目に入ると 神の言葉を真剣に研究し、神の恵みに支えられて、祈りを通して神ご自身と交わるほうが、この世の人間社会との付き合いで得られる最大の喜びよりも、ずっと良いだろうという心境に至った。

 坂道を上ったり下ったり、ぬかるみに転んだり起き上がったりして23 年、神の意思に委ねて落ち着き、神の摂理の処置の上に自分自身を全て投げ打ったと、クルーソーは思っていた。
ところが! 人食い人種が島を訪れ、捕虜を料理して食べているという現実を突きつけられ、恐怖が募り、平安は一挙に粉々に崩れ落ち、希望を追い払ってしまった。神に対する信頼は、「神が私に善くして下さった」という素晴らしい経験だけに基づいていたからであると、回顧している。自身の信仰を改めて点検し 「この方は創った時と同じ力と摂理でもって、この世界を支配しておられる」ことを確認し、真剣に神の加護に身を委ね、「野蛮人の(魔の)手から救ってください」と、熱心に祈った。

robinson_crusoe_2_14.jpg これ以上は望めない純真で、忠実なフライデーを与えられ、クルーソーは真の創造主を熱心に教えた。「その方は全能で、我々に対し何でもでき、あらゆるものを与えることも、全てを奪い取ることもできるのだ」と教え、次第に彼の目を開いたのである。

永遠の、孤独な旅人デフォー

 人生そのものが孤独という一つの普遍的な行為に過ぎないのに、どうして島での人生が孤独で、苦しいと言えるのかと、クルーソーは考える。故国に帰還するという奇蹟に恵まれながら、クルーソーは再度、漂泊の旅に出てしまう。この旅は、総括の旅、島に残した人々の信仰確認という収穫の旅、赦しの旅である。デフォーは最後に以下のようにクルーソーに言わせて、第二作を締めくくっている。

 「私は今、これまで経験したどの旅よりも長い旅に出る準備をしている。私は波乱に満ちた72 年の生涯を送ってきた。今では、隠退するということの価値も、平和に生涯の終焉 を迎えることのありがたさも充分知ることが出来たつもりである。」
 

(ご案内)この投稿内容は、CR誌39号クリエーション・リサーチ・ジャパン)に連載したものです。
14:02 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
Comment








Trackback

講演依頼&お問合せ

公式サイト案内

講演情報_バナー

ご案内


skype_seminar_sidebuner4-e1357803993569.png




christmas_1.jpg
安藤和子 文 / 神谷直子 絵
800円(定価)

カテゴリー

最近の記事

過去の記事

安藤和子の紹介

Comment

  • ノアの洪水の史実について学ぶ:加古川バプテスト教会において
    Yukimichi Okabe (11/06)
  • STAP細胞 (16) 笹井芳樹理研副センター長自殺! 自分自身を赦せなかったのだろうか?
    吉村友喜 (08/07)
  • STAP細胞 (16) 笹井芳樹理研副センター長自殺! 自分自身を赦せなかったのだろうか?
    tera (08/06)
  • 老人には時速5kmで踏切を渡りきれない! / 踏切も交差点も若者対象の設定
    頭の悪いおぢさん (05/11)
  • STAP細胞 (9): 後出しジャンケンで 「グー・チョキ・パー」 全部を出した指導者
    武田照子 (04/19)
  • STAP細胞 (6) 関係する記事を公式ホームページに公開
    田口哲夫 (04/10)
  • STAP細胞 (3) 著者/共同研究者たちの責任・他施設の専門家たち
    やすだ (04/03)
  • STAP細胞 (2) 関係者たちの理解し難い対応・著者たち、他施設の専門家たち
    杉森 経弘 (03/19)
  • 盗んだ人、盗まれた人
    ソープ (07/25)
  • 盗んだ人、盗まれた人
    Yasuhisa Hamada (07/25)

Link

Search

Feed

Mobile

qrcode 無料ブログ作成サービス JUGEM