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STAP細胞(1):細胞生物学の歴史を愚弄?

 僅か1年少し前、ノーベル賞受賞に 日本中が沸き立った。それは、ノーベル賞という学問的な意味以上に、臨床応用を人々が期待したからである。人間の痛んだ臓器を、まるで機械のように、今にも部品交換できるかの如き期待が膨らんだのである。

 ともあれ、この大きな業績には日本中が大喝采し、山中教授は人々の期待に応えて、一般の人々を対象に何度も講演会を開催して人々に情報公開をし、啓蒙を図られた。通常、学者の講演会は専門家しか理解出来ない難解な講演会であり、一般の人々は参加しないものであるけれども、こと iPS細胞に関する講演会では、一般の人々、そして臨床への適用をひたすら待っている人々が大勢参加していた。


 
 この iPS細胞に関するノーベル賞は、上記のように臨床応用への期待があるので、他のノーベル賞とは異なり人々の関心は消えるどころか、むしろ高まっている。iPS細胞でさえ世界中が驚いたのだが、それでもあの方法は遺伝子を導入して行うという、生物学の常識で納得しやすい方法であった。今、さらに発展的な発見に、日本中が、世界中がびっくり仰天することになった。


 
 今回の報告は、「若いマウスから細胞を採取して、弱酸性で処理してちょっと刺激を与えると、マウスの細胞は初期化されて万能細胞になる」ということである。この細胞は、「Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency」(刺激に惹き起こされて獲得された多能性細胞)と名付けられた

 これは生物学者にとっては理解の範囲を超えた方法であり、そんなことを真面目に言うなんて気でも狂ったのではないかと思われるような青天霹靂(へきれき)の結果なのである。事実、ある学術誌に論文を投稿したところ、論文の審査員から次のようなコメント・・・というよりは、無名の研究者であると知っての激しい叱責と言うべきだろうか?・・・が付いて戻ってきたという。

 「過去数百年に及ぶ細胞生物学の歴史を、あなたは愚弄するのか?」

 その学術誌とは、かの有名な権威ある学術誌「Nature」である。「Nature」はその名の通り、自然科学の広範囲の分野の学術論文を掲載する超一流の科学雑誌である。その雑誌の審査員からこのような酷評をされたら、どんなに辛かっただろう。実際、彼女は「誰も信じてくれないので、やめてやろうと思ったことも、泣き明かした夜も数え切れない。今日1日だけは頑張ろう、明日1日だけは頑張ろうと思って続けて来た」と言っている。

 ある生物学者は、「生物学の常識外れ。あり得ないことを見てしまったという感じです」と言っており、筆者も全く同じ思いである。それくらい生物学の常識では理解出来ない発見であったのであり、生物学者の筆者は科学の発展の速さと、その進み行く道におののきさえ覚える。昔、筆者が現役の研究者であった頃には想像も出来なかった医学・生物学の歩みを、今見せられているという感がある。

 STAP細胞をiPS細胞と比べてみると、作成方法がより簡単であること、作成に要する時間は1週間程度と短時間であること、収率が7〜9%と高率であること(iPS細胞は1%未満)、全身の細胞に分化出来る(iPS細胞では胎盤細胞は出来ない)、ガン化の危険率が低いという魅力的な性質を備えている。しかし、iPS細胞はすでにヒトの細胞で確認されており、すでに臨床試験に入っている。一方、STAP細胞は若いマウスで確認され、サルの細胞で確認が取れたという報告があるだけで、ヒトの細胞で作れるかどうかは不明である。また、初期化されるメカニズムはまだ解らない。
 

発見した若い研究者は、STAP細胞について次のように言い、冷静に見つめているのが解る。

 実際に実験している私は、将来的にiPS技術との関連性の議論は早すぎる段階と、感じている。数十年後、100年後の人類社会への貢献を意識し研究を進めていきたい。


 ES細胞、iPS細胞、STAP細胞、そして臓器移植など、科学技術革新の発展に伴い、目まぐるしく医療の世界も変化していく。それをどのように理解し、どのように応用していくべきか、一つひとつについてその本質を見極める必要がある。機会ある毎に、これら先端の情報も、少しずつ紹介する積もりである。

 人間を動物の延長として考える思想からまず抜け出して、人間の尊厳をしっかりと身に付けて、このような目まぐるしい変化に正しく対応できるようにと願う。
 なお、iPS細胞について、又臓器移植について、講演及び資料をウェブサイトに公開しているので興味のある方は見て下さい。

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