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言葉は生きている(5)対人関係の悩みが曖昧な表現を生む温床か? 日本人は誇りを失ったか?

 この頃、世の中が息苦しくなって、人間関係がうまくいかないという理由だけで、時には命のやりとりにまで及ぶほどの数々の犯罪まで生み出している。対人関係に悩む人々は生き悩み、人との関係を何とか無事にやり過ごすために、曖昧な表現をしてどうとでも解釈できるような物言いをする人々が増えている気がする。

 何かが「良い」時に、「良い」と言いきるどころか、「良いと思います」と言って、表現を和らげる。確かに何かを言い切らないで、「〜と思います」「〜ではないでしょうか?」と表現を和らげると自分の心を隠すことができるし、人間関係がうまくいくための一助にはなるだろう。それでさえ曖昧さが足りないということだろうか、さらに好い加減な表現にして、「良い『かな』、と思います」と非常に自信の無い、何を言っているのか分からない表現にしてしまう。こういう風に曖昧に言うことによって、柔らかな表現になる。相手が万が一にも「悪い」と思っていても、相手と対立しているのではないという印象を与えようと細心の注意を払うほどの念の入れようである。

 しかも、さらにさらに、それでさえ足りなくて、「良い『かな』と『は』思います」と、ダブルの注意を払う表現をする。「と『は』思います。」という表現は、実は、本当は非常に強調した表現でありながら、言外に、「とは思うものの、本当はそれを主張することは余り正しくないとか、心の片隅で思うけれども、行動に移す気は無いとか行動するのは正しくない、とか、まぁ、どうでも良いのじゃないの」というような、暗黙に否定的な意味を含んだ表現なのである。ところが、今やそのような使い方であるという認識が、消え始めているように思う。

 自分の語ること、書くことに自信が無くなってきたために、このような表現が流行して、そして挙げ句の果てに元々の意味が薄らいできているという現象が生じているのである。
 言葉は生き物であるからと言って、こうしてどんどん奇妙な言語が広がっていくことには抵抗を覚えずにはおられない。

 自分の民族の言語を大切にする人々としてフランス人は有名であるが、日本人はこのことに少し学ぶ必要があるのではないか。
日本人が言語を含めて、自分の文化に自信を失い、日本人であることに誇りを失ったのは今に始まったことではない。歴史を振り返ると誰でも思い浮かべるのは、250年に及ぶ鎖国と、武力的・高圧的な強制力によって西洋諸国と不平等条約を結ばされた開国、そして日本は「文明」の遅れを発見したということである。

 「文明」、すなわち「力」である。経済「力」、機械「力」、武「力」などに代表されるような、「闘争」を搔き立てる代物である。すなわち、ある意味で「人間としての尊厳とは一線を引かなければならない部分、すなわち文明、力」の遅れを発見し、そしてそれに引きずられて、日本人は文化にまで自信を失ってしまったのである。そして、世界の分捕り合戦に余りにも遅れて参画したために、その歪みは大きかった。喘ぎ続けた日本は、今なお延々とその後始末に苦しんでいる。目に見えることも、目に見えない文化の側面までも。

 日本に営々と築かれてきた美しい文化は、「力」とは対立するものであるために時代遅れのものとして捨て去られ、大切にしない風潮が助長されてきた。そして、その中に日本語も含まれている。確かに、効率だけを大切にする「文明」を操るためには、日本語は不便な言語である。そのために、日本語を粗雑に扱って「力」を身に付けようとしたのかも知れない。

 日本人が日本人としての真の誇り・自信を取り戻すのはいつの日のことだろうか?



 
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