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生物の優れたリサイクル機能・オートファジー

「1949年・昭和24年」・・・日本人にとって特別な年であった

 

1949年、世界大戦敗戦後間もない日本は占領下にあって「進駐軍」がおり・・・町に銃を持った兵士がいたということではないが・・・、敗戦による痛手から、経済的に文化的に、そして精神的にも立ち直っていなかった。日本人はあらゆることで負け犬であり、武力闘争に負けただけであるのに、そのように受け取ることが出来なかったのである。

 

それは、日本の歴史に深く関わっているが、簡単に言ってしまえば、日本の歴史に於いて常に独立を維持してきており、外国に侵略されたことが、それまで一度もなかったということである。常に、「勝てば官軍」「武力で勝てばそれが正義」という認識が植え付けられていた国民だったのだろう。したがって、武力に負けただけと思うことが出来ず、しかも、アメリカの進駐軍の一兵士に過ぎないマッカーサーが・・・という感覚が日本人にはあったのだが・・・日本人にとって「神」であり、尊敬の的であった天皇を見下しているかの如き写真が公表されたのである。正装し威儀を正して直立不動している天皇と、でれっとした”軍服”を着て、両足を揃えず休めの姿勢でズボンのポケットに手を入れて突っ立っている体のばかでかいマッカーサーが並んでいる写真・・・は、どうひいき目に見てもマッカーサーの態度は傲慢、傍若無人、無礼千万な態度であり、日本全体が愚弄されたように思え、口に出して言うことが出来ないだけに日本人は腹立たしい思いをしたのであろう。

 

まだ学齢前の私は余り理解してはいなかったが、それでも祖母や両親がこの写真に痛く心を痛めていたことを覚えている。我が家は特別に天皇崇拝をしていたわけではないが、それでも、この写真の意味することを深く考え、こんなことになってしまった日本や日本人の将来を危ぶんでいたのである。

 

そして、事実起こったことは、進駐軍が行政、司法、立法全てに亘って日本を統治したのであり、その結果、東京裁判によって軍部のみならず民間人の日本の指導者であった人々が、「裁判」・「正義」という仮面のもとに絞首刑に処せられてしまったのである。

 

敗戦後4年、1949年は、国民はまだまだ飢えに苦しみ、爆弾や焼夷弾で破壊された町に住み、社会が混乱し、自信を失い、日本国は、日本人はまだ右往左往していた時代であった。

 

ノーベル賞・・・学問の最高の賞

 

1949年、そんな社会に、湯川秀樹(写真・Wikipedia)のノーベル賞受賞のニュースが飛び込んできた。日本人最初のノーベル賞である。今でさえ、ノーベル賞受賞のニュースは結構明るく大騒ぎされるニュースであるが、その比ではない。全てのことにうちひしがれ、劣等感の虜になり、少なくとも心のありように関しては何をする気力もないかに見えた日本人をわき上がらせてくれたニュースであった。

 

受賞の対象となった業績は、理論物理学者が「寝床の中で考えついた」という受賞決定直後の会見で言われたことも、何もない日本人の学者としてはなるほどとうなずかせるものであった。実験科学研究は、今ほどでなくても、実験器具を備えた実験室が必要であり、ほどほどの経済的支えが必要である。理論科学は・・・今は、コンピューターが必要であるが大きく価なコンピューターはネットでつながっていて共用できるので、やはり実験科学ほどは金食い虫ではない。

 

湯川秀樹のノーベル賞が決定したときに、母が言った。「(世界的な賞を与えられる前に、日本がきちんと評価して)文化勲章をすでに受けていて、本当に良かった」。アメリカ追従の日本のありようにうんざりしていた日本人の一人として、自分の目で優れたものを見つける目を日本人が失っていなかったことに、母は安堵したのであった。

 

大隅良典さんのノーベル賞受賞

 

 

日本では、昔と異なり毎年のようにノーベル賞受賞のニュースで賑わうようになったが、学問の内容は一般人にはわかりにくい。大隅良典さんが(写真、Wikipedia)「オートファジーの仕組みの解明」の業績によりノーベル賞を受賞されたが、一般には聞き慣れないであろう「オートファジー」を易しく紹介するつもりであったのに、余りにも前置きが長すぎた。それで、オートファジーの話は次回に後回しにして、大隅さんの挨拶にあった言葉を、改めて紹介するに留める。

 

「科学研究に於いて、現在余りにも目先の結果を社会は要求しすぎる、追いすぎる。すぐに応用に、経済的なことに結びつかないと評価されないので、研究費が出ないし、優れた人材が集まらない。日本の今後の科学研究を憂う」というような趣旨であった。全く同感である。

 

昔々、私が実験科学研究の分野を志したとき、「社会のお役に立つ」という若さ故の気負い、自負、意気込みがあった。それに冷水をぶっかけた先輩がいた。「科学研究は、いつの日か人類の役に立つだろうという希望を抱くことだけで良い。それを自分で確かめる日が来ると思うな。究極は、生物がどうなっているかに興味があるから、研究が面白いから一生懸命やるんだ。」

 

大隅さんも、このオートファジー現象が、ガン研究などになにがしかのつながりがあるとは予想もしなかったはずである。ただ、面白いから、生命現象を研究してきたら今に至ったということだろう。

その一方で、iPS細胞の研究は、その生物学的な意味や詳細は分からなくても、とにかくも応用に直結した研究であったので、一般人にも解りやすかったのだろう。ちなみに、この研究に関して、山中教授は一般人を対象に何回かセミナーを開催されたので、京都、神戸のセミナーには必ず参加させていただいた。参加者は、殆どが生物学とは無縁の人々であったようだが、実に盛況であった。研究の進展などについて、またセミナーが開催されるのを心待ちにしているのだが・・・

 

 折しもこの秋学期に、生物の特徴全般や、生物を正常に維持する働き・ホメオスタシス機能、細胞の自食作用、オートファジー、貪食細胞、免疫などを学生たちに講義をした。生物に組み込まれているリサイクル機能が、どんなに精巧であるか、エネルギー効率がどんなに良好であるかなどを、生物の驚異の一端を若い学生が納得してくれることを期待しつつ、教師自身が改めて驚嘆し、感動を覚えた次第である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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